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設計編

910ミリの倍数にこだわるな

 

新築住宅の設計の時に、施主さんと話をしていると、住宅全体を910ミリのグリッドに当てはまるように設計すれば、安くなると考えている方が、よくおられます。

つまり部屋は、たとえば2730ミリ×3640ミリにするとか、廊下や階段の幅は910ミリにするとかです。(いずれも壁中心間の寸法)

これは一面では正しいことでもあるのですが、一面では意味のないことといえます。

どういうことかといいますと、施工者側は確かに材料の無駄が出にくいので、少し得をするのです。

ところが施主(オーナー)側の立場に立ちますと、910ミリの倍数で設計したからといって、施工者からの工事費の見積が安くなるわけではありません。また910ミリのグリッドを外れたからといって高くなるわけでもありません。

 

なぜかといいますと、施工業者は工事費の見積を、面積で計算するからです。

たとえば、先程の2730×3640の部屋にフローリングを張ろうとしますと、その面積は、9.9平方メートルですが、たとえば3000×3300の部屋でも9.9平方メートルです。

その場合、面積が同じなので、フローリングの見積額も同じになるのです。

見積は、どの部分についても、このような方法で行われますから、見積もり額に違いは出てこないのです。仮に何かの関係で違いが出たとしても、全体からすれば微々たるものにすぎません。

 

つまり、910ミリのグリッドにあてはめたからといって、見積額(すなわち施主が施工業者に支払う工事費)は安くなるわけではなく、ただ、施工業者が実際の工事に当たって、若干得をするだけのことです。

それよりも、施主にとっては、決まった寸法のグリッドにこだわる方が、設計上のマイナス方が、よほど大きいと思います。なぜならば910ミリのグリッドに各部をあてはめようとすると、いろいろと無駄なところや使いにくいところが出てくるからです。

 

たとえば廊下や階段の幅は、壁中心間910ミリにした場合、実際の幅(有効幅)は750ミリくらいしかとれません。これは建築基準法の最低限で、最近の感覚からすると、かなり狭い感じがしますし、手すりなどを取り付けますと、さらに狭くなってしまいます。

トイレなども同様で、壁中心間910ミリ(有効幅750ミリ)では一応、用はたせても、便器の周囲の清掃などが、たいへんやりにくくなってしまいます。

一方、台所などは、幅を壁中心間2730で設計し、両側にシステムキッチンを配置すると、間隔(中央の通路幅)は1300ミリくらいになって、中途半端に広くなり、無駄が多いうえに、かえって使いよくありません。

これは1000〜1100ミリくらいになるようにするのが、最も使いやすいのです。

 

このように910ミリのグリッドにこだわると、使いにくいだけでなく、不必要なスペースも作ってしてしまうということになりがちです。

施主さんは、そんなマイナスを受け入れてまで、施工業者が若干の得をするように取りはからってやる必要は全然ありません。

 

私の設計室では、グリッドにあてはめることを、殆どしません。すべて、その部分部分において、最適な寸法を検討し、決定していきます。

こうすると設計には手間がかかります。部分の検討もさることながら、全体の整合性も十分に考慮しなければならないからです。

しかしそうすることが、結局は予算を最も有効に活用した、暮らしやすい住宅を実現することになります。

 

ところが世の中のほとんどの住宅が、建売住宅もハウスメーカー住宅も、決まった寸法のグリッド(多くは910ミリの倍数)にこだわって設計され、建てられています。

それはなぜでしょうか。なぜ自由な寸法で作らないのでしょうか。

実はここにも、商品化(規格型)住宅の問題があります。

 

私がいつも、商品化(規格型)住宅のことを批判的に書くので、ハウスメーカーに何か恨みでもあるのかと思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。そんなことはないのですが、私が日本の住宅について、ここが変だなあ、ここがおかしいなあと思うところを突き詰めていくと、結局住宅の商品化および規格化の弊害に行き着くのです。

 

商品化(規格型)住宅は、必然的に規格に則った製造によって作られますから、どうしても基準寸法を決めて、それの倍数によって各部の設計を行っていきます。

仮にその基準を踏み外した部分ができると、その部分は特注生産になりますから、大変割高になってしまいます。

メーカー側は、そんなことをすると手間がかかりますし、それに割高になってしまうと、売れません。だから、わざわざそんなことをしませんし、施主(ユーザー)に対しても、そんな設計提案はしません。

それで、一般の方の中には、建物はそのような、ある決まった寸法のグリッドにはまり込むようにしか作れないもので、自由な寸法では作れないのだと思っている方が、たくさんおられるわけです。

 

でも、通常の在来工法であれば、寸法の取り方などは全く自由にできますし、前述のように、それによって工事費が上がることもありません。

日本では土地代も建築費も高額です。ですから、それを最大限有効に生かす設計をすることは、建物を設計する者の、きわめて重要な努めです。