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室内環境編

通風と換気をどうするか・・・高気密の右往左往

 

住宅を設計するに当たって、いつも考えどころとなるのが、通風と日射の問題です。

夏場においては、日射はさえぎるのが前提ですが、通風についてはそれを積極的に取り入れるのかどうか、すなわち自然の通風を主とするのか、エアコンによる冷暖房を主とするのかということで、それによって、家のつくりは大きく変わってきます。前者の場合は外気開放型になるでしょうし、後者の場合は外気遮断型になります。

一方、冬場は、自然の通風を取り入れたいという人は、いないでしょうから、通風は遮ればいいのですが、日射はできるだけ採り入れたくなります。

また、夏であれ冬であれ、健康面や安全面で一定の換気は必要ですから、そのへんのことを、どのようにうまくバランスさせるかということは、よく考えて設計をする必要があります。

 

そんな中で、今回は通風や換気、そして気密ということについて述べてみたいと思います。

 

元々、日本の木造住宅は、外気開放型であったと言えるでしょう。「徒然草」に「住まいはありようは夏を旨とすべし」との有名な文章があります。そのように、夏は縁側などの開口部を大きく開放し、自然の風通し得ていました。冬はその分、寒かったでしょうが、火鉢、囲炉裏、暖炉、あるいは厚着などでしのいでいたのでしょう。

しかし近代になって、エアコンが普及し、各家庭に設置されるようになると、機械力を使った冷暖房が主体になっていきました。そうなると外気の流入というものはマイナス要素になりますから、外気遮断型に移行していくことになりました。

そういった家づくりに一層拍車をかけたのが、1970年代の石油ショックで、石油の高騰によるエネルギー不足から、住宅においても省エネルギー性能が要求されるようになりました。そして効率よく冷暖房を行うために、建物の壁や開口部の断熱性を高めるとともに、隙間をできるだけなくして気密性も高めることが推奨されます。いわゆる「高気密・高断熱」の家づくりです。

 

しかし、ほどなく別の弊害が起こりました。シックハウス症候群です。建材や家具から発生するホルムアルデヒドなどの揮発性の化学物質が、人体に悪影響をおよぼすことが明らかになりました。そして、その害を防ぐために、シックハウス法が施行され、住宅の主な部屋には、常時換気の設備を設けること、いわゆる24時間換気が、法律(建築基準法)によって義務付けられました。。シックハウス症を避けるために、外気を取り入れることが要求されることになったのですが、具体的には、部屋の空気を2時間で丸ごと入れ替える能力の換気扇を設置することが義務付けられました。これによって、建物の高気密化は、実質的に意味をなさなくなってしまってしまいました。「高気密」ということが、声高に言われなくなったのも、この頃からです。

新築住宅はもちろんのこと、既存住宅もリフォームを行った場合は、24時間換気設備を設けなければなりません。

 

一応それが、家づくりの基準になって定着していっていた矢先、愕然とすることが起こりました。本年3月の東日本大震災に伴って発生した福島での原発事故です。大気に拡散した放射性物質から逃れるため、政府は一定の範囲の住民に屋内退避を指示したのですが、その場合、窓や換気扇を閉じて、外部の空気を室内に入れないように指示しました。すなわち法律で決められている常時換気をするなということであって、このような外気の汚染に対して、再び気密性が求められたのです。

 

もとより、外気は必ずしも清浄であるとは言えません。排気ガスやスモッグ、黄砂など、外気を取り入れるとかえって室内環境を汚すことは、今までもありましたし、これからもあり続けるでしょう。

しかし私には、室内の空気環境をどうするかという家づくりの基本的な指針というものが、なにか事あるごとに右往左往しているように感じられます。これは、本来、住宅とはその建つ敷地の立地条件に根差したものであるべきであるのに、それを全国一律に規定しようとすることろに問題があるのではないでしょうか。そのために、上記のような右往左往が生じてしまうのです。

 

そういうことを考えると、住宅を外気開放型にするのがよいとか、外気遮断型にするのがよいとか、一概に論じることはできません。その建物の立地条件によって、どのようなコンセプトで住宅を設計するかが、違ってくるからです。したがって重要なことは、設計前の十分な現地調査であり、その条件に適応した建物の設計ということになります。

 

これは、何も通風や気密性だけのことではありません。構造をどうするか。(木造か、鉄筋コンクリートか、鉄骨か・・・たとえば今回の東日本の災害では津波や水害の危険性がある場所では、木造に比較して鉄筋コンクリートの建物の堅牢性が実証されました。しかし直下型地震であった阪神淡路震災では、鉄筋コンクリートのビルが多数倒壊しています。)遮音性をどうするか。(交通量の多いところや、住宅が建て込んだところでは、日々の暮らしに置いて切実な問題となります。)日射や断熱をどうするか。(防暑を重視するのか、防寒を重視するのか。)こういった、建物の設計上の基本に関わってきます。

 

このように、千差万別の敷地条件のもとで、最も適合した住宅というものは、一品ごとの設計にならざるをえません。日本という、地域差の大きいデリケートな風土の国においては、規格化された商品化住宅(ハウスメーカーなどの住宅に代表される)のような画一的な家づくりは、本来適切とは言えません。

[いつもハウスメーカーの家を悪く言って申し訳ないのですが、それが日本の住まいをダメなものにしている元凶だと思いますので。]

 

それに加えて、クライアント(住み手)には、それぞれ個性があり、嗜好があり、年齢が違い、家族構成が、異なり、家に求めるものも違います。

 

したがって、住宅設計においては、これまでもこの連載で繰り返し述べてきましたように、敷地条件の十分な調査を行い、クライアントの志向の的確な把握と理解の上で、それに最も適した、構造・断熱・通風・採光・防音、そしてデザインなどの、基本的なコンセプトをしっかりとおさえて、クライアントとの共通認識としておくことが、きわめて大切です。この点をおろそかにすることは、住宅づくりの最初から、ボタンを掛け違えることになりかねません。

家づくりは、個人における大事業ですから、くれぐれも最初からボタンを掛け違ったなどということがないようにしなければなりません。